甲斐性なしの僕と何も知らなかった彼女

彼女にはいつも期待を裏切られた。

 

 

 

暫く連絡をよこさなかった事に気が触れていた僕が浮気を疑い彼女の携帯をチェックした時も

 

僕が最後のデートの日と決めて一緒に居酒屋に行ったあの日、あの場所、あの帰り道でも

 

きっと、月に何度かは2人で散歩したいつもの川沿いで、別れの決意を告げたあの日も。

 

 

 

彼女は浮気なんてしていなかったし、相変わらず彼女の楽しそうに話す様は僕を安心させてくれてその笑顔が本当に可愛かったし、僕なんかよりずっと大人で、何も知らなかった。

 

 

僕は彼女の有無を聞かれたらいつも1年前に別れた事にしていたし、自分でも話がつまらないと思うし、メンヘラで甲斐性なしだった。

 

 

 

「ああ、僕はこの子の事嫌いになれないんだ」

 

最後のデートの日、彼女の顔を見る度何度も。

 

 

後ろめたい気持ちを何処かに忘れて

 

荒んでいた心が癒されて

 

疑っていた自分がばからしくなって

 

 

 

 

 

それでも先延ばしにしていた終わりからは目を背くことはできなかったし後悔はしていない。

 

 

 

 

 

別れて1ヶ月が経つ。

 

 

 

 

 

今でも僕にとって理想の彼女だったと思う。

 

 

 

 

 

 

彼女との出会いは1年前の梅雨の季節だった。

 

帝都からたくやv2が出張で2,3ヶ月程牡蠣にきてて、彼とのコンビとしての戦績も軌道に乗った頃だった気がする。確か2ヶ月目くらい。

 

平日でも関係なく2人でよく街に出ていて、その日はいつもの様に僕らの前を歩いていた大学生風の女の子2人組に声をかけた。

 

 

「お姉さん達どこいくの?」

 

「そこのドンキ!ヘアアイロン見にいくの。」

 

 

2人の内1人はよく喋ってくれる子だった。別にタイプでもなくその辺によくいる様な顔立ち。

 

 

もう1人の女の子は、全く取り合ってくれなかった。少し早歩きで俯いていて早くどこかに行ってよ、と言いたげな様子を醸し出していた。

 

その時、顔はハッキリと見えなかったけど雰囲気がとても好きでいつもなら損切りするところを「いつまでついてくるん、、」なんて言われながら少し強引に買い物についていった。

 

 

ドンキに入ってヘアアイロンを選んでいるところでその気になっていた子と少しだけ話せた。

 

 

 

 

ぱっちりした二重で肌がとても綺麗で童顔で、

髪型は確か結んでたけどボブくらいで怪訝な表情をしつつもとても可愛らしい雰囲気だった。

 

 

けど話しててほんと釣れない子だなあって思った。会話に消極的で言葉に棘もあった。

 

結局、全然和めてなかったけど衝動的にまた会いたいって思ったからLINE教えてって言った。

 

まあ普通に断られた。ダメ元だったけど。

同い年っていう情報しか聞き出せなかった。

 

放流して歩きながらほんとあーゆうの即りたいんだよってたくやv2に話したのを覚えてる。

 

 

 

2回目の彼女との出会いはその1週間後くらい。

 

 

僕はいつもの様にソロでH通りでサージングしてたら彼女が歩いて帰っているのを見かけた。

 

「やっほ!覚えてる?」

 

「うわ、この前の人じゃん、、暇なの?」

 

前よりは話に取り合ってくれる様子でなんとか和み一杯だけなら、という事で居酒屋へ。

 

彼女はパッと見で優しそうとか大人しそうとかって判断されるけど実際はハッキリ言うし毒舌だからイメージと違う、なんて思われて男からは敬遠されたりするなんてことを話していた。

 

 

人見知りでも気が強いのか強がりみたいな印象

 

 

退店後、終電もあり食いつき的にもホテル打珍は通らないと判断し個室のネカフェ打珍。

 

なんとか搬送して普通に和もうとしても全く隣に座ってくれずいきなり帰られる始末。

 

ゆっくり崩すしかないかなんて思ってた矢先に急に帰るなんて言い出して本当に驚いて、

結局、この日もまた連絡先を聞けなかった。

 

 

 

次もまた1週間後くらいにH通りで出会った。

 

当時出撃頻度が多かったのもあるけどH通りは牡蠣のメインストリートなのでこの時期でも人の多い時間帯に歩けばキセク1人はすれ違う。

 

 

この日は仕事の飲み帰りだったらしくこの前の事には意外とあっさりしていて少しだけ酔っ払っていた様子だった。

なんやかんや言われながらも楽しく和めた。

 

せっかくだから座ってゆっくり話したいしカラオケでも行こって言って近くのカラオケへ。

 

 

話は聞いてくれるけど食いつき自体はいまいちで手応えを感じない。話を引き出そうにも多くは語ってくれず、まだ信用されていなかった。

 

同い年、大体世間でいうと学生くらいの年の彼女は今迄1人しか付き合った事がなく、経験人数も1人。言い寄られる事はあっても警戒心が強いのか相手にしないか断ってきたらしい。

 

経験上、この日に即るなら下手に深く和んで刺そうとせずなるべく楽しい場や雰囲気を作ってなし崩し的な方法で即るしかないと判断した。

 

 

カラオケへたくそだから、って言われて歌ってくれず僕が1曲だけ歌って1時間程で退店。

 

 

ホテル打珍。

 

 

何もしないからなんて聞き慣れた台詞を流しつつコンビニで買い物を済ませてホテルへ。

 

 

でも本当にホテルに入ってからも彼女は椅子に座ってて距離があったしベッドにおいでよって言っても頑なだったけど真面目になりすぎないようになんやかんやで崩してなんとか準々即。

 

 

結局、抱かれるまでそこまで食いつきも高くなく、心を開いてくれてた感じはなかったけど、

 

なし崩し的で華麗でもないただの泥臭い即。

 

 

今思えばきっと彼女も日々に退屈してて寂しかったのだと思う。タイミングがよかっただけ。

 

 

それでも僕は嬉しかった。

初めて出会った日、口もろくに聞いてくれずLINEすらも教えて貰えなかったタイプの女の子が横で寝息を立てて寝ている。

 

準々即は初めてだったし結果には満足だった。

 

 

 

 

 

その日から彼女とは連絡を取り合った。

 

 

 

僕は甘いもの好きだったから暑い日お互いの空いた時間にジェラートに誘うと二つ返事で快諾してくれた。彼女も甘いものが大好きだった。

 

 

通りにあるジェラート屋さんで2人並んで椅子に座って話した。彼女は笑顔でよく喋った。

 

彼女の仕事がパティシエだって事もそこで初めて知ったし、甘いもの好きで話してみれば趣味も合うし、何より楽しそうに話すので心を開いてくれてた様子が感じ取れて嬉しかった。

 

その日、彼女は夕方頃から出勤の予定だったので職場の近くまで送った。

 

 

後日、またデートに誘った。

 

 

バーに行き、2人で初めて出会った日から、あの日初めてセックスした日までの事を話した。

 

どうやら僕が口説こうと話した言葉も全く響いていなくて、僕のことを何を言っても間に受けないような変な人だと思っていたようだった。

 

 

 

その日、ホテルに向かう道中のコンビニの前で

 

 

「俺と付き合ってよ。もっかい抱くならちゃんと彼女として抱きたいなって思った。」

 

 

なんで僕は告白したのかはよくわからないけどこの子なら彼女にしたいと思ったのだろう。

 

 

 

「いいよ。私も彼氏欲しいと思ってたし。」

 

 

言い訳みたいな理由で気に入らないなと思ったけどなんとなくそう言いそうな性格なのは知ってた。本当にそう思ってただけかもだけど。

 

 

 

僕は嬉しくなりホテルのトイレで牡蠣のグループLINEで彼女ができたことを直ぐに報告した。

 

今はないけど当時の牡蠣のグルチャはとても賑やかで驚きやお祝いの言葉が多く返ってきた。

 

 

 

僕の提案で朝方2人で写真を撮った。

彼女は照れるように笑っていたのが懐かしい。

 

 

 

 

7月の下旬に差し掛かる頃だった。

 

 

 

お互い休みの日とか夜の時間だったりすると直ぐに既読がついて可愛い文章が返ってきた。

 

 

 

 

 

夏は2人で近くの海に行ったり

小さなところだったけど水族館にも行った。

彼女は一人暮らしをはじめた。

 

 

 

秋は2人の誕生日が一週間だけ違いで

当時、僕はまともに働いてなくてお金があまりなかったけど彼女が欲しがっていた時計を買ってレストランに行った。

痛手だと思ってたけど予想以上に喜んでくれて祝ってあげたこっちが嬉しくなる程だった。

 

彼女は僕の誕生日にDWのバングルを買ってくれてレストランに連れて行ってくれた。

僕がそれをつけてる写真を送るとこれまた予想以上に喜んでくれてとても嬉しかった。

 

 

この頃から彼女の家に行くようになったし、手作りのスイーツなんかも振る舞ってくれた。

 

ほんと近場だけど牡蠣のメインの観光スポットである宮島にも行った。

カフェに行ったり鹿に追いかけられたり海沿いを散歩したり。

 

 

あれから宮島には行ってないけど日が暮れる前の影が伸びた境内、夕暮れ時の海岸通りを歩くとはしゃいでた彼女を思い出すのだと思う。

 

 

 

 

夕日が照らしたあの日の彼女と、あの空間は殆ど奇跡みたいで生きててよかったと思った。

 

 

 

 

 

冬、電話したいって言われてしたら仕事が繁忙期で辛かったみたいで号泣された時は驚いたし

 

 

クリスマスには彼女がサプライズでPaul Smithのネクタイピンをくれた。

 

僕も何かあげたけど何をあげたかは忘れた。

 

 

 

正月早々に2人で大阪に旅行に行った。

 

USJに行きたがってて彼女の提案でキャラクターのティムのモチーフのお揃コーデにしたし

 

アトラクションでは怖がっていた彼女が乗る直前に半泣き以上になってて驚いたし

 

その後、大好きなスヌーピーを発見してその辺の子供以上に興奮してたから面白かった。

 

 

その夜、少し喧嘩したけど仲直りしてセックスして起きたら昼前だったなんてこともあった。

 

その前日はkyoさん、閻魔さん、アーリーさんが遠征で牡蠣にきてオールでナンパして疲れてたのもあったけど、相変わらず僕は計画性がなくてもっとちゃんとしてやればなあと思った。

 

その後はオレンジストリートで洋服を見たりカフェでパンケーキを食べたりして帰った。

 

 

帰ってからは初詣で豆腐味の変なソフトクリームを2人で食べたのも良い思い出だ。

 

 

バレンタインデーには手料理と手作りのケーキを振る舞ってくれた。

 

僕はお礼にニコライバーグマンのフラワーボックスをあげた。変な声を出して喜んでくれた。

 

 

彼女の家に泊まって朝一緒にいく米粉のパン屋さんは大好きだったし、

 

 

お互い仕事が忙しくてお花見には行けなかったけど川沿いでピクニックしたりした。

 

僕は前日ほぼオールでナンパしてて眠かったけど、目が覚める程の出来栄えで美味しかった。

 

 

本当に感動して、どこかもっと遠くの楽しいところまでドライブに連れてってあげなきゃね、なんて言った。結局それは叶わなかったけど。

 

 

彼女との思い出は食べ物の絡んだことばかりだけど、それほど彼女が美味しい物を頬張って幸せそうに、楽しそうに最近会ったことを報告してくれるあの時間が僕は好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

僕は幸せなんだと思ったし、

自分にそう言い聞かせていた。

 

 

 

 

 

それでも、いつか終わりはくるものなのだと

 

幸せを感じる度にもう1人の僕はいつも囁く。

 

 

 

ナンパを初めたての頃は僕と「貴虎」の間にはハッキリとした境界線があって、

 

街にいる時はもう一人の自分を演じている様で

自分のことがわからなくなった時もあった。

 

 

今ではその境界線が曖昧で、

 

貴虎にならなければならないという強迫観念すらあって、当初の感覚は忘れてしまった。

 

 

 

 

 

彼女の前では僕は僕でいられた。

 

 

彼女はいつも僕自身を肯定する言葉をくれた。

 

 

 

「○○はかっこいいし優しいから私はこんな最高な彼氏がいて本当に幸せ者だよ!」

 

 

「今日後輩とご飯行ってきたんだけど、○○の事をいっぱい自慢してきたよー笑」

 

 

 

彼女とは会ってデートする度に誰かに自慢してきたっていう報告を受けてた気がする。

 

 

 

僕はそんな彼女が大好きで愛おしかったけれど

 

 

 

 

一方で僕はナンパでの寝不足や自己管理能力の欠如が原因でいつもデートに遅刻していたし、

 

 

セックスの時の彼女の不正出血と僕の陰部の違和感があった時期が被ってビタミン剤と称してクラミジア用の薬を飲ませたこともあった。

 

 

スカウトにナンパ師開示されて連れ出しを邪魔されたりしてた時期があったときも、彼女と歩いてる時にされたら嫌だなと思ってクソみたいな自分とクソみたいなそのスカウトを呪ったし

 

 

コンビ連れ出しで即ってノーグダだったのに警察沙汰になりかけたあの朝あの帰り道も、自転車で出勤する彼女を見て自己嫌悪に陥った。

 

 

 

 

 

 

僕はナンパを辞めることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

辞めるという選択自体、選択肢にはなかった。

 

 

それでもいいって思ってたけど、

 

 

 

いつからだろうか。

 

 

 

いつからか、彼女の存在が少し煩わしく感じてしまうようになってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

僕はもう彼女と付き合い始めた頃の自分とは少し変わってしまったような気がしていた。

 

 

少しだけどメイクをするようになって

 

服の趣味や、女の子の趣味も変わったし

 

彼女くらいのスペックの子ならストネト併せて月に2人くらいは抱けると思い始めていて、

 

 

もっと良いのを抱けるようにならなくちゃという向上心に似た焦りのような感情もあって、

 

 

お互い連絡を取る頻度や会う頻度が著しく減ってしまったのも別れを考える原因になった。

 

 

 

その癖、僕は彼女にもう好かれてないのかもしれないと思うのが嫌で彼女の浮気を疑った。

 

 

 

 

ある日、スマホ見せてよ、と僕は言った。

 

 

彼女は快諾して見せてくれた。

 

 

LINE、電話の履歴も見たけど何もなかった。

 

 

 

むしろ男とのやりとりで彼氏さんとどんな?と聞かれて僕を褒め称える内容の返信があった。

 

 

 

 

僕は疑った自分が女々しくて嫌になった。

 

 

 

 

浮気の一つでもされてたかった。

 

 

 

その方が吹っ切れただろうから。

 

 

 

 

どう考えても僕にとって理想の彼女だった。

 

 

 

 

 

 

その後もお互いしばらく連絡は取らず、

あまり会うこともなくなってたけれど。

 

 

 

 

 

僕が最後のデート決めた日、夏のボーナスが出たから奢るよと言って居酒屋に誘った。

 

 

彼女の口から

飲食業だからコロナウイルスの影響で月の収入自体が大体6割くらいになってしまったこと、

加えてボーナスも出なかったことを聞いた。

 

 

耳に挟んではいたけれど、

 

彼女の事が好きな彼氏ならばきっと支えてあげようなんて考えに至っただろうと思った。

 

 

あとは

自前で着せようと思ってたのにコロナでお祭りがなくなり僕の浴衣姿が見れず残念だとか、

 

一人暮らししようと思ってるなんて言うと

早くしようよなんてわくわくした様子だった。

 

 

奢りって言ったのにお金を出そうとしてきたし

 

 

帰り道にスタバのドリンクを買ってくれた。

 

僕たちは2人で途中まで歩いて帰った。

 

 

僕がおどけてみせると、

彼女が少し呆れたような口調で言葉を返す。

 

 

 

どのキセクとデートしても嫌でも彼女とがいちばん楽しくて心地いいんだと実感させた。

 

 

きっと僕は彼女の気持ちを確かめたかった。

 

 

最初から、きっとこの子の気持ちが僕から離れたらその時が別れる時だろうなんて思ってた。

 

 

だから楽に別れたくて嫌いになりたかった。

 

 

「ああ、僕はこの子の事嫌いになれないんだ」

 

 

 

彼女の顔を見る度何度も。

 

 

 

後ろめたい気持ちを何処かに忘れて

 

 

荒んでいた心が癒されて

 

 

悩んでいた自分がばからしくなった。

 

 

 

さよならの時はいつも彼女は振り向かない。

 

 

いつも僕は、その背中を名残惜しそうに見る僕という光景を俯瞰して僕なんかいなくても彼女は強かに生きていけるだろうと思っていた。

 

 

 

 

その日からお互いに連絡しなかった訳だけど、

 

 

10日後くらいに彼女に話したいことがあるから都合の合う日にきて欲しいとLINEで伝えた。

 

彼女の返事のLINEには珍しく絵文字もスタンプも使ってなかった。何かを悟った様子だった。

 

 

その次の日。

一年前付き合い始めたくらいの日。

 

 

いつもの様に彼女は僕の家の下にきた。

 

 

 

迎えに行くと振り向く彼女を見てこの光景も最後なんだなと思うと少し寂しくなった。

 

 

 

彼女は少し怪訝な顔で僕の肩にゴミがついてるよ、と言って払ってくれた。

 

 

 

「話ってなあに?」

 

明るい口調で彼女は聞いた。

 

 

 

「散歩しながら話そう。」

 

暗い口調にならないように僕は答えた。

 

 

 

いつも一緒に散歩する川沿いのファミマで僕はフラッペを買って彼女はカフェオレを買った。

 

 

飲みながら少し歩くと

 

 

「ところで話ってなあに?」

また同じような口調で聞かれた。

 

 

 

 

 

 

「なんか話し辛くてさ、」

僕の口調は少し曇った。

 

 

 

 

 

 

 

 

別れの言葉を告げようにも声が震えてしまいそうで口にすることができなかった。

 

 

 

 

 

きっと10分近くは沈黙が続き、

2人で夕暮れの川沿いを長らく無言で歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おれはさ、もう別れてもいいと思ってる。」

 

 

ようやく捻り出したのは、ため息混じりの少し震えた踏ん切りのつかない情けない言葉。

 

 

 

 

 

 

「べつにいいよ」

 

 

 

 

 

 

別段、驚きはしなかった。

 

 

 

 

 

「うん、そうしよっか。」

 

 

 

 

 

ただ、本当にもう終わってしまうんだなという事を実感して、頬を伝いそうだったから少し上を向いてそのまま無言で歩いた。

 

 

 

 

 

「そっか、じゃあこれで最後だねー。」

彼女は言った。

 

 

 

「私も別れようかなって思ってたんだよね〜。でもなんか色々してくれたから申し訳なくて」

 

 

 

何となくわかっていた。

相変わらずだなあ、だなんて僕は思った。

 

 

 

 

「不満だったことがあれば言った方がいいよ。私も前別れた時言えなくて後悔してるから。」

 

 

 

 

「逆にあるなら先に言ってよ」

 

 

 

 

 

彼女の口からはつらつらと不満が出てきた。

 

たまに言う事が以前と違うからどうすればいいかわからないとか、

細かく書くのはなんだかやるせないから書かないけど大体そんな感じ。

 

 

予想以上に相変わらず強かだった。

 

 

少し涙も引いてしまった。

 

 

 

 

僕は仕方ないから笑って聞き流した。

 

 

 

 

 

 

「言わないの?言わないと後悔するかもだよ」

彼女は不満だった事について聞いてきた。

 

 

 

 

 

 

「おれはさ、お前みたいな顔も可愛くて性格も良い子が彼女で本当によかったって思ってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

別れ際はもっと淡白に済ますつもりだった。

 

 

 

ただこの日も彼女は可愛かったし、嫌いになれない、寧ろ好きだったんだと心から実感した。

 

 

 

だから感謝の言葉しか出てこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も、○○の事は本当にみんなに自慢してたしいつも私の話を聞いてくれてありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の家の近くまでの川沿いを歩いた。

 

 

僕は時たま空を見上げながら。

 

 

 

 

 

 

 

橋の手前で

 

 

 

 

 

 

 

 

「大した所連れてってあげれなくてごめんね」

 

また声が少しだけ震えた。

 

 

 

 

 

 

「ぜんぜん。一緒に大阪行った時はほんと楽しかったし、そのお陰で辛い仕事も頑張れたよ」

 

 

 

 

 

 

わかってる。もう昔のことだね。

 

 

 

 

 

「出会えてよかった。本当にありがとう。」

 

僕は情けない。

別れ際も綺麗に別れられない。

 

 

 

 

 

 

「そんなのずるいよ。」

 

一生懸命次の言葉を紡ぐ彼女を見ていられなかった。彼女は既に別れを決めているんだ。

 

 

 

 

 

 

「じゃあね。」

 

僕は背中を向けて立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐ視界が滲み溜め込んでいたものが溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言えなかったことがあるとすれば、

 

ずっと変わらないでいて欲しいなんて自分勝手な要望くらいだけど、そんな臭い台詞を吐いたら女子会のネタにされてしまいそうで怖い。

 

 

 

 

彼女は結局何も知らなかった。

 

 

別れを告げた日、川沿いを歩きながら

「前に友達と一緒に電車乗ってたら女の子といるのみかけたんだけどあれ妹ちゃんだよね?

友達が見つけて女の子といる、って言ってたから。でも、妹ちゃんと仲良いの知ってるし。」

 

あの日は妹と買い物行ってた、なんて嘘をついたけど疑ってすらなかったんだなと思った。

 

 

ある日なんで疑わないの?と聞いた事がある。

 

浮気されたことがないからだと思うなんて言ってたけど意図的に避けている様にも思えた。

 

そんなことで悲しむ顔を見たくなかったからいちばん恐れていたことがなく良かったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は先週ブメを放ってた案件とアポで全くグダなく直ホ即だったなあ。

 

値5くらいのギャルで性格も雰囲気も元カノとは真反対のタイプだったけどセックスはエロくてヤるだけならこっちのが楽しいと思う。

 

でも搬送途中でなんだかお金の無駄みたいに感じてシラけちゃった自分がいた。

 

 

最中も少し勃ちが悪かったし。

 

 

 

付き合ってた頃を思い出すとこんなになっちゃうから正直ブログ書くのも気が進まなかった。

 

 

 

 

 

でも未だに

 

 

美味しいスイーツを食べた時とか、

 

綺麗な景色を見たときとか、

 

お洒落なカフェを見つけたとき、

 

何か面白い雑貨や家具があったとき、

 

キセクと話してる時だって、

 

 

 

思い出してしまうんだけど。

 

 

 

 

別れたあの日こそ僕は振り返らなかったけど

 

 

 

 

 

さよならの時にいつも振り向かなかった彼女の背中をいつまでも見送ってる様で嫌だな。

 

 

 

 

 

 

 

初夏と花火と操り人形

 

 

 

 

 

昔から夏は嫌いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

じとじとしていて汗をかくし、暑いと怠けてしまうし、世の浮ついた雰囲気や夏のイメージと相反して青春時代の甘酸っぱい思い出とか別にないし。なかったし。

 

 

 

 

 

 

久しぶりにブログを書こうと思える感情になった。

 

 

 

童貞をストナンで卒業してからほぼ半年経ったし、

ブログを書くのも半年ぶりくらい。

 

 

 

 

ある一連の出来事があった。

 

 

 

 

 

 

最初の頃は思う存分自分に陶酔したくて、ない頭使って文章をこねくりまわして書いてたけど今じゃ色んな方とストリートで知り合って顔見知りの方が増えたので正直ブログを書くのは恥ずかしい。暫くurlは消してたし。

 

 

 

 

最近はたぶん、ひとつの理由としてエモさ(風情)を感じたいが為にナンパをしているのではないかとおもう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春夏秋冬、深夜の風に当たるのは好き。

 

 

 

 

 

 

 

 

今夜の風は僕の性格や今の感情や文章と違ってとっても爽やかで涼しい。湿気とかそういう違いかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7月26日の0時を過ぎた夜。3時くらい。帰り道。

 

あの夜は今日みたいに爽やかでもなかったし涼しくもなかった。もう少しじとっとしていてなんだか気怠くて、気持ちも今よりずっと複雑で混沌としていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜までの僕といえば少しずつタイプな子を連れ出すことは増えたものの、負けを繰り返していて、それでもなんだかんだ楽しくやっていたとおもう。

 

 

 

 

 

 

23日の夕刻、ワンピースを着た女の子に声をかけた。普段僕は目が悪くて女の子の顔をあまり見ずに声をかけにいくことが結構ある。声をかけたときは少しだけ怯んでしまった。目が大きく、くりっとしてて小動物のような控え目な印象でライトブラウンの長い髪が似合う子。

 

 

 

 

 

買い物帰りだったらしく、良いのか悪いのかよくわからない反応だった。それでも、暑いし一緒にアイス食べよで連れ出せた。おれ1人で何か食べるのめっちゃ寂しくて無理なんよ〜みたいなノリだった気がする。

 

 

 

コンビニで買ってカラオケか公園で食べる予定だったけど、コンビニのアイスは嫌みたいな反応があって近くのジェラートのお店に入った。

 

 

コンビニのアイスでグダる子は初めてだったし僕が言うのも何だけど生意気で面倒くさそうだなと思った。

 

意外と少し気が強いタイプ。割と年上だし。

 

 

 

 

 

 

横並びの椅子に座って話しているときも最初はすごい怪しまれてたし、言葉にいちいち棘があった。

 

 

 

 

軽く過去、現在の恋愛等の話をしながら言葉の棘については適当にいなしてイジるようなイメージで接した。

 

 

 

 

 

 

最初は食いつきがあるのかどうかはイマイチわからなかったけど、彼女の話す好きなタイプの特徴などから少しずつは感じられた。年下で〜とかそんな感じ。

 

 

 

 

 

 

別れ際にLINE打珍をするとかわいいから、、みたいな感じでデレてた。かわいいて言われるの微妙だけど。

 

 

 

 

 

 

可愛いし花火したいなとおもっていたので一緒に花火しよでアポ打珍。反応良くてサクっとアポは決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

当日、彼女は軽く髪を巻いてきてくれていてとりあえず軽く感謝を伝えてめっちゃ似合ってるとか適当なこと言って。イジる。挙動で食いつきは感じられたからたぶん5歳近く年上だけど姪っ子に接するようなイメージ。

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり虎値7。クラスにいたらいちばんタイプ。

  

 

 

少し興奮気味。だからこそ冷静になることを意識した。

 

 

 

 

 

 

 

終始食いつきはあっていじりやすかった。

軽くご飯食べながらかわいいかわいい言われて年下好きらしいしよくわからんけどぶっ刺さってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店を出て公園へ。

花火。こんな可愛い子と2人っきりでするのは初めて。

 

 

 

本当に半年以上前の僕だと考えられないことだ。

 

 

 

 

 

 

  

初夏の花火。

 

もいいけど、正直僕は隣りにいる女の子とのこれからが気になって仕方がなかった。花火よりもずっと。

 

 

 

 

 

 

聞こえはいいけど、要するにセックスできるかどうか。

それが気になって花火どころではなかった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのせいでぶっちゃけ花火なんてする前から飽きてた。

 

 

 

 

 

 

 

今思えばこの瞬間が絶頂だったのかもしれない。

 

 

 

 

 

なんだか悲しいけど食いつきも含め。

 

 

 

 

 

この時の表情は最中、事後のときの表情よりも価値があった、のかも。あまり見てないからわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今思えばベッドの上での表情くらいしか覚えてない。

 

 

 

 

 

 

事後の僕に対する笑顔よりも花火に対するそれの方が自然だったのかな。あまり見てないからわからないや。

 

 

 

 

 

 勝つか負けるかどうなのかで頭はいっぱい。

 

 

 

 

 

 

 

 

デートを楽しむ人のマネは上手くなったのかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこと考えてたら笑い方や笑った顔すらも忘れた気がする。ほんとは興味なかったのかな。

 

 

 

 

 

 

ベッドの上以外ではあんまり見てないから、

 

 

 

わからない。

 

 

 

 

 

 

 

可愛いすぎて真っ直ぐ見れなかったことにしとこかな、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベンチに座って、和む。

ハグをして首から耳へと少しずつ攻めてみる。

 

いつもは作業みたいな感覚で冷めているけどこの時ばかりはずっとドキドキしてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

夏の匂いと彼女の匂いがまじりあっているような感じ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

軽いキスだけして、行こ。とだけ伝えてホテルへ。

 

 

 

 

 

 

形式グダ。適当に流す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホテルへ入って恥ずかしがるのを適当に流して、準即。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は純粋に楽しんだ。

行為中はいっぱいかわいいって言った気がする。

 

なんでこんな可愛い子が隣で寝てるんだろとか思って。

 

この時の表情だけはちゃんと覚えてる。

 

時間が止まって仕舞えばいいのに、とかって。

 

 

 

 

 

 

 

最高潮の瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2回目は痛いからって断られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

密室ながら居心地悪い風が吹いてきたのを感じた。

なんとなく会うのは最後なんかなという気がした。

 

 

 

 

どこで食いつきが落ちたんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

そんな気持ちの悪いことがあってたまるかと思った。

 

 

 

 

 

準即案件でこんなになるなんて今までなかったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直、2回目断られたし、おっぱい小さいし、身体の相性あまり良くない気がしたし、猫みたいに気まぐれだし、2回目断られたし、顔が可愛いくて好きなだけ。

 

 

 

 

 

 

 

所詮ナンパなんて遊びだし。

 

 

 

 

 

 

 

そんなことはわかってた。

 

 

 

 

 

それでもまた会いたいなと思ったのは顔が好きだから。もっといいところをいっぱい知りたい。

 

 

 

 

 

 

せめてなるべく余裕をもって冗談を言える風でありたかったな。悲しい目をしていた気がする。

 

 

 

 

 

 

 どうせ適当に嘘ばっかりついていたのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互い次の日仕事で解散しなければならなかった。

 

 

 

 

 

 

感謝の気持ちを伝えた。色っぽい言葉も使った。

 

 

 

 

 

 

 

       次の休みいつだっけ? 

 

 

 

 

       

 

 

         

 

 

 

      『不定休だからわからない。』

 

 

 

 

 

 

それだけ答えて彼女は目を逸らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、そっか。

 

なんとなく予想していた通りの反応。

 

 

 

 

 

 

 

別に後頭部を鈍器で殴られたような感覚だった、とか、目の前が真っ白、とかそういうのとは違うけれど、

 

 

 

 

 

目の前の子が過去に繋がっては疎遠になっていった女の子達と重なって見えて既視感を感じた。

 

 

デジャヴみたいな感じ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひと夏かどうかわからないけど初夏のそれは終わった。

 

 

 

 

 

 

甘美なものは刹那。

 

 

 

 

 

 

悲しく笑ってるように見えてそれでいいっておもった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さよならを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は、少し歩くと何を期待したのか振り返ってみた。

 

 

 

 

 

 

 

たぶん、初即ぶりくらいに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰路につく。午前2時過ぎ。

坊主で朝帰りのような足取り。

 

それでも可能性は感じていた。もっと出会いはある。

 

 

 

 過去最高に可愛い子を抱けたんだ

 

 

 

そう自分に言い聞かせると少しは足取りは軽くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月後半までは会えないとLINEで言われた。

 

 

 

 

 

 

 

期待してはいけないと思いつつ何より待ち遠しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ20日だけど、結論から言うと。

 

 

 

 

 

 

もう会えないと言われた。

 

 

彼氏ができたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キセクヨネスケした後の帰り。

女の子の家でセックスするのは好き。

 

 

 

 

 

いい感じにエモくて。

性欲以外満たされなかったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相変わらず女の子にはいつも何か期待してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し寂しいけど新しい人と楽しんでね、と返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日は沈んだ。

電車で帰るつもりだったけど歩いて帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

悔いはない。もうヘラってるとこ見られたくないし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早足で歩く。全て、振り切りたくて。

 

 

 

 

 

 

  

その日の街頭の光も目に焼き付いている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後に。

 

 

 

 

 

僕はこの活動を通して女の子のグレーな部分は見てきたけど、それ以上に僕のブラックな部分にも気付いた。

 

 

 

 

 

 

元カノに対してもそうだったけれど僕は結局、自分の思い通りに動くオモチャが欲しかっただけ。

 

 

 

 

 

長期的に遊ぶ以上の関係は求めない。

 

 

 

 

 

 

 

飽きるまで消費するだけ。

 

 

より形の良い人形を選んで。

 

 

 

 

 

それが良いことか悪いことかは関係ない。

倫理や道徳、正義を語るならこんな活動はしない。

 

 

 

 

 

 

 

だから僕は僕の素直な欲望に従いたい

 

 

 

 

 

 

 

所詮は遊びなんだ。

 

 

 

自分が楽しめればいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は22時からアポ。

虎値は5前後だし別に心躍るわけでもない。

街から近くて平日ヨネスケできる子だといいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初即と哀情と童貞卒業

 

2月17日。金曜日。

 

 

これまでの丸5日間、ナンパの中毒性のある快楽と不安や焦りに駆られほぼ終電後しばらくまでストリートに立ち続けていた。

 

 

初の連日に続き本格的なナンパノックを決行したおかげか、調子は上々で連れ出しこそはあまりできなかったが番ゲ効率は初期に比べると著しく向上していた。

 

少しの高揚感と共に夜風に吹かれて早足で街を歩いた。

 

 

 

終電前3声かけ目(このくだりはくだらない反省なので飛ばして読んでいただいてもかまいません)。

 

 

後ろ姿を見て早速声をかける。

 

『こんにちは^ ^』

 

顔を見た途端少し後悔した。

年齢こそは若めだったが目が隠れてしまうほど前髪が長く、恋愛には無頓着そうな子だなと察した(40くらいのおばさんはざらでまれにおばあちゃんに声かけをかましてしまうこともあり少し萎えるのでどうにかしたい)。

 

一応話を聞くとこれからカラオケに行く途中らしかったのでついていってみることした。

 

そのとき心の中では、続けていれば必ず即れるからなるべく可愛い子で卒業したいという余裕と、童貞である自分に嫌気が差していてなんなら誰でもいいという焦りが拮抗していたので少し複雑な心境だった。

 

しかしその迷いは妥協に変わった。

 

なんと部屋に入るなり英語のわけのわからない洋楽を歌いはじめたのだ(ちょっとかっこよかった)。

 

一時放流しようかと考えたが、そのときの僕はその判断を瞬時に下せるほど経験を積んでいなかったし、個室連れ出しなのでうまくいけばギラつけるチャンスはあると希望的観測をした。

 

その考えも束の間、安室奈美恵やレディーガガをノリノリで歌いはじめたのでここでギラつくのは無理だなと改めた。和みすらゆっくりできそうになかったのだ。

 

 

僕も歌った。

 

 

終わった後、終電グダを少し押し20分だけという約束でバーに入った。

 

話を聞くつもりが焦りが生じて口説くような形で少し喋りこんでしまったので後から後悔した。

 

経験人数を聞き出したりハンドテストもクリアしたが、やはり20分経つとそんなつもりではなかったグダが生じ、バス停まで小走りさせられ見送った。

 

時間もお金も無駄にしてしまったので、次からは早めに損切りをしようと心に誓ったできごとだった。

 

 

久しぶりのカラオケは楽しかったけど。

 

 

 

終電後、10声かけ目。

 

 

帰ろうかなという気持ちに少し心が傾いていたころ。

 

 

前方からワイドパンツに小腸の柔毛のような変なモコモコしたジャケットという最近よくお目にかかるコーディネートをした女の子が歩いてくるのを目にした(僕はそのジャケットを“柔毛ブルゾン”と呼称している。柔毛ブルゾンを着た子を見かけるとすかさず声をかける。なぜか大概反応がいいのだ。ワイドパンツの子もわりかし反応がいい。あるあるではないだろうか)。

(後に知ったことだがボアジャケットというらしい。)

 

オープン。飲み帰りで少しほろよいのご様子だった。

和み、話を聞くとネカフェに泊まるところらしい。

 

もしかしてこれは、と思った僕はどうせならラブホに入ってみたかったのでついてくるよう打珍してみた。

 

通った。

 

それだけだった。

 

なぜか冷静だった僕は、柔毛ブルゾンをハンガーにかけてあげたり脱がすとき畳んであげたり、見つめあったりこまめにキスをしてあげたり、ただ抱いてあげたりクンニもしてあげたりと知らないながら優しくしようと気を遣って頑張った。

 

彼女はフェラもしてくれたし、騎乗位もしてくれた。

 

最後は正常位をしてしばらく抱いた。

 

 

二回して果てた。

 

 

 

ピロートークでは、

地元は牡蠣だが以前まで彼氏と同棲で関東に住んでいて別れたので帰ってきた元風俗嬢だということ、半年ぶりのセックスでナンパされたのは初めてだということ、年齢は適当に3、4歳詐称する僕だがそれよりも少し年上だということ、最近気になる人がいてその人にバレンタインデーのチョコをあげた、などの話を聞いた。

 

 

彼女はひと通り話し終わると寝てしまった。

 

 

僕はなぜか何時間経っても眠ることができなかった。

 

 

薄暗い中、天井をぼんやりと眺めて、

少し光が差し込んでくると、小鳥が鳴くのを聞いて、

辺りが明るくなってくると、おなかが空くのを感じた。

 

 

そのときはただ全てが急に過ぎ去って頭があまり追いついていかなかったんだとおもう。

 

 

薄っぺらな即だったけど楽しかった。心が満たされた。何より初めて女性に認められた感じがした。

 

 

彼女は、9時前頃に起きた。

 

僕は、喉が渇いてるだろうからと水を渡した。

 

彼女は、シャワーも浴びずに着替えた。

 

僕は、川沿いの洒落た店で朝ごはんをたべよと言った。

 

彼女は、帰って食べるからいいと断った。

 

 

僕らは、口数も少なめにホテルを出た。

 

 

次は健全デートをしてみたかったけどなんだか気まずくて、LINE教えてと言えなかった。いつも言えるのに。

 

 

 

僕らは、口数も少なめにさよならを告げた。

 

 

 

僕は、少し歩くと何を期待したのか振り返ってみた。

 

 

 

僕は、しばらく立ち尽くしていたけど寒さと空腹を感じると踵を返した。

 

 

 

下を向いて歩いていたので大きく空を仰ぎ見てみる。

 

 

 

そのときの僕には青空は眩しかった。

 

 

うんざりするほど。