甲斐性なしの僕と何も知らなかった彼女

彼女にはいつも期待を裏切られた。

 

 

 

暫く連絡をよこさなかった事に気が触れていた僕が浮気を疑い彼女の携帯をチェックした時も

 

僕が最後のデートの日と決めて一緒に居酒屋に行ったあの日、あの場所、あの帰り道でも

 

きっと、月に何度かは2人で散歩したいつもの川沿いで、別れの決意を告げたあの日も。

 

 

 

彼女は浮気なんてしていなかったし、相変わらず彼女の楽しそうに話す様は僕を安心させてくれてその笑顔が本当に可愛かったし、僕なんかよりずっと大人で、何も知らなかった。

 

 

僕は彼女の有無を聞かれたらいつも1年前に別れた事にしていたし、自分でも話がつまらないと思うし、メンヘラで甲斐性なしだった。

 

 

 

「ああ、僕はこの子の事嫌いになれないんだ」

 

最後のデートの日、彼女の顔を見る度何度も。

 

 

後ろめたい気持ちを何処かに忘れて

 

荒んでいた心が癒されて

 

疑っていた自分がばからしくなって

 

 

 

 

 

それでも先延ばしにしていた終わりからは目を背くことはできなかったし後悔はしていない。

 

 

 

 

 

別れて1ヶ月が経つ。

 

 

 

 

 

今でも僕にとって理想の彼女だったと思う。

 

 

 

 

 

 

彼女との出会いは1年前の梅雨の季節だった。

 

帝都からたくやv2が出張で2,3ヶ月程牡蠣にきてて、彼とのコンビとしての戦績も軌道に乗った頃だった気がする。確か2ヶ月目くらい。

 

平日でも関係なく2人でよく街に出ていて、その日はいつもの様に僕らの前を歩いていた大学生風の女の子2人組に声をかけた。

 

 

「お姉さん達どこいくの?」

 

「そこのドンキ!ヘアアイロン見にいくの。」

 

 

2人の内1人はよく喋ってくれる子だった。別にタイプでもなくその辺によくいる様な顔立ち。

 

 

もう1人の女の子は、全く取り合ってくれなかった。少し早歩きで俯いていて早くどこかに行ってよ、と言いたげな様子を醸し出していた。

 

その時、顔はハッキリと見えなかったけど雰囲気がとても好きでいつもなら損切りするところを「いつまでついてくるん、、」なんて言われながら少し強引に買い物についていった。

 

 

ドンキに入ってヘアアイロンを選んでいるところでその気になっていた子と少しだけ話せた。

 

 

 

 

ぱっちりした二重で肌がとても綺麗で童顔で、

髪型は確か結んでたけどボブくらいで怪訝な表情をしつつもとても可愛らしい雰囲気だった。

 

 

けど話しててほんと釣れない子だなあって思った。会話に消極的で言葉に棘もあった。

 

結局、全然和めてなかったけど衝動的にまた会いたいって思ったからLINE教えてって言った。

 

まあ普通に断られた。ダメ元だったけど。

同い年っていう情報しか聞き出せなかった。

 

放流して歩きながらほんとあーゆうの即りたいんだよってたくやv2に話したのを覚えてる。

 

 

 

2回目の彼女との出会いはその1週間後くらい。

 

 

僕はいつもの様にソロでH通りでサージングしてたら彼女が歩いて帰っているのを見かけた。

 

「やっほ!覚えてる?」

 

「うわ、この前の人じゃん、、暇なの?」

 

前よりは話に取り合ってくれる様子でなんとか和み一杯だけなら、という事で居酒屋へ。

 

彼女はパッと見で優しそうとか大人しそうとかって判断されるけど実際はハッキリ言うし毒舌だからイメージと違う、なんて思われて男からは敬遠されたりするなんてことを話していた。

 

 

人見知りでも気が強いのか強がりみたいな印象

 

 

退店後、終電もあり食いつき的にもホテル打珍は通らないと判断し個室のネカフェ打珍。

 

なんとか搬送して普通に和もうとしても全く隣に座ってくれずいきなり帰られる始末。

 

ゆっくり崩すしかないかなんて思ってた矢先に急に帰るなんて言い出して本当に驚いて、

結局、この日もまた連絡先を聞けなかった。

 

 

 

次もまた1週間後くらいにH通りで出会った。

 

当時出撃頻度が多かったのもあるけどH通りは牡蠣のメインストリートなのでこの時期でも人の多い時間帯に歩けばキセク1人はすれ違う。

 

 

この日は仕事の飲み帰りだったらしくこの前の事には意外とあっさりしていて少しだけ酔っ払っていた様子だった。

なんやかんや言われながらも楽しく和めた。

 

せっかくだから座ってゆっくり話したいしカラオケでも行こって言って近くのカラオケへ。

 

 

話は聞いてくれるけど食いつき自体はいまいちで手応えを感じない。話を引き出そうにも多くは語ってくれず、まだ信用されていなかった。

 

同い年、大体世間でいうと学生くらいの年の彼女は今迄1人しか付き合った事がなく、経験人数も1人。言い寄られる事はあっても警戒心が強いのか相手にしないか断ってきたらしい。

 

経験上、この日に即るなら下手に深く和んで刺そうとせずなるべく楽しい場や雰囲気を作ってなし崩し的な方法で即るしかないと判断した。

 

 

カラオケへたくそだから、って言われて歌ってくれず僕が1曲だけ歌って1時間程で退店。

 

 

ホテル打珍。

 

 

何もしないからなんて聞き慣れた台詞を流しつつコンビニで買い物を済ませてホテルへ。

 

 

でも本当にホテルに入ってからも彼女は椅子に座ってて距離があったしベッドにおいでよって言っても頑なだったけど真面目になりすぎないようになんやかんやで崩してなんとか準々即。

 

 

結局、抱かれるまでそこまで食いつきも高くなく、心を開いてくれてた感じはなかったけど、

 

なし崩し的で華麗でもないただの泥臭い即。

 

 

今思えばきっと彼女も日々に退屈してて寂しかったのだと思う。タイミングがよかっただけ。

 

 

それでも僕は嬉しかった。

初めて出会った日、口もろくに聞いてくれずLINEすらも教えて貰えなかったタイプの女の子が横で寝息を立てて寝ている。

 

準々即は初めてだったし結果には満足だった。

 

 

 

 

 

その日から彼女とは連絡を取り合った。

 

 

 

僕は甘いもの好きだったから暑い日お互いの空いた時間にジェラートに誘うと二つ返事で快諾してくれた。彼女も甘いものが大好きだった。

 

 

通りにあるジェラート屋さんで2人並んで椅子に座って話した。彼女は笑顔でよく喋った。

 

彼女の仕事がパティシエだって事もそこで初めて知ったし、甘いもの好きで話してみれば趣味も合うし、何より楽しそうに話すので心を開いてくれてた様子が感じ取れて嬉しかった。

 

その日、彼女は夕方頃から出勤の予定だったので職場の近くまで送った。

 

 

後日、またデートに誘った。

 

 

バーに行き、2人で初めて出会った日から、あの日初めてセックスした日までの事を話した。

 

どうやら僕が口説こうと話した言葉も全く響いていなくて、僕のことを何を言っても間に受けないような変な人だと思っていたようだった。

 

 

 

その日、ホテルに向かう道中のコンビニの前で

 

 

「俺と付き合ってよ。もっかい抱くならちゃんと彼女として抱きたいなって思った。」

 

 

なんで僕は告白したのかはよくわからないけどこの子なら彼女にしたいと思ったのだろう。

 

 

 

「いいよ。私も彼氏欲しいと思ってたし。」

 

 

言い訳みたいな理由で気に入らないなと思ったけどなんとなくそう言いそうな性格なのは知ってた。本当にそう思ってただけかもだけど。

 

 

 

僕は嬉しくなりホテルのトイレで牡蠣のグループLINEで彼女ができたことを直ぐに報告した。

 

今はないけど当時の牡蠣のグルチャはとても賑やかで驚きやお祝いの言葉が多く返ってきた。

 

 

 

僕の提案で朝方2人で写真を撮った。

彼女は照れるように笑っていたのが懐かしい。

 

 

 

 

7月の下旬に差し掛かる頃だった。

 

 

 

お互い休みの日とか夜の時間だったりすると直ぐに既読がついて可愛い文章が返ってきた。

 

 

 

 

 

夏は2人で近くの海に行ったり

小さなところだったけど水族館にも行った。

彼女は一人暮らしをはじめた。

 

 

 

秋は2人の誕生日が一週間だけ違いで

当時、僕はまともに働いてなくてお金があまりなかったけど彼女が欲しがっていた時計を買ってレストランに行った。

痛手だと思ってたけど予想以上に喜んでくれて祝ってあげたこっちが嬉しくなる程だった。

 

彼女は僕の誕生日にDWのバングルを買ってくれてレストランに連れて行ってくれた。

僕がそれをつけてる写真を送るとこれまた予想以上に喜んでくれてとても嬉しかった。

 

 

この頃から彼女の家に行くようになったし、手作りのスイーツなんかも振る舞ってくれた。

 

ほんと近場だけど牡蠣のメインの観光スポットである宮島にも行った。

カフェに行ったり鹿に追いかけられたり海沿いを散歩したり。

 

 

あれから宮島には行ってないけど日が暮れる前の影が伸びた境内、夕暮れ時の海岸通りを歩くとはしゃいでた彼女を思い出すのだと思う。

 

 

 

 

夕日が照らしたあの日の彼女と、あの空間は殆ど奇跡みたいで生きててよかったと思った。

 

 

 

 

 

冬、電話したいって言われてしたら仕事が繁忙期で辛かったみたいで号泣された時は驚いたし

 

 

クリスマスには彼女がサプライズでPaul Smithのネクタイピンをくれた。

 

僕も何かあげたけど何をあげたかは忘れた。

 

 

 

正月早々に2人で大阪に旅行に行った。

 

USJに行きたがってて彼女の提案でキャラクターのティムのモチーフのお揃コーデにしたし

 

アトラクションでは怖がっていた彼女が乗る直前に半泣き以上になってて驚いたし

 

その後、大好きなスヌーピーを発見してその辺の子供以上に興奮してたから面白かった。

 

 

その夜、少し喧嘩したけど仲直りしてセックスして起きたら昼前だったなんてこともあった。

 

その前日はkyoさん、閻魔さん、アーリーさんが遠征で牡蠣にきてオールでナンパして疲れてたのもあったけど、相変わらず僕は計画性がなくてもっとちゃんとしてやればなあと思った。

 

その後はオレンジストリートで洋服を見たりカフェでパンケーキを食べたりして帰った。

 

 

帰ってからは初詣で豆腐味の変なソフトクリームを2人で食べたのも良い思い出だ。

 

 

バレンタインデーには手料理と手作りのケーキを振る舞ってくれた。

 

僕はお礼にニコライバーグマンのフラワーボックスをあげた。変な声を出して喜んでくれた。

 

 

彼女の家に泊まって朝一緒にいく米粉のパン屋さんは大好きだったし、

 

 

お互い仕事が忙しくてお花見には行けなかったけど川沿いでピクニックしたりした。

 

僕は前日ほぼオールでナンパしてて眠かったけど、目が覚める程の出来栄えで美味しかった。

 

 

本当に感動して、どこかもっと遠くの楽しいところまでドライブに連れてってあげなきゃね、なんて言った。結局それは叶わなかったけど。

 

 

彼女との思い出は食べ物の絡んだことばかりだけど、それほど彼女が美味しい物を頬張って幸せそうに、楽しそうに最近会ったことを報告してくれるあの時間が僕は好きだった。

 

 

 

 

 

 

 

僕は幸せなんだと思ったし、

自分にそう言い聞かせていた。

 

 

 

 

 

それでも、いつか終わりはくるものなのだと

 

幸せを感じる度にもう1人の僕はいつも囁く。

 

 

 

ナンパを初めたての頃は僕と「貴虎」の間にはハッキリとした境界線があって、

 

街にいる時はもう一人の自分を演じている様で

自分のことがわからなくなった時もあった。

 

 

今ではその境界線が曖昧で、

 

貴虎にならなければならないという強迫観念すらあって、当初の感覚は忘れてしまった。

 

 

 

 

 

彼女の前では僕は僕でいられた。

 

 

彼女はいつも僕自身を肯定する言葉をくれた。

 

 

 

「○○はかっこいいし優しいから私はこんな最高な彼氏がいて本当に幸せ者だよ!」

 

 

「今日後輩とご飯行ってきたんだけど、○○の事をいっぱい自慢してきたよー笑」

 

 

 

彼女とは会ってデートする度に誰かに自慢してきたっていう報告を受けてた気がする。

 

 

 

僕はそんな彼女が大好きで愛おしかったけれど

 

 

 

 

一方で僕はナンパでの寝不足や自己管理能力の欠如が原因でいつもデートに遅刻していたし、

 

 

セックスの時の彼女の不正出血と僕の陰部の違和感があった時期が被ってビタミン剤と称してクラミジア用の薬を飲ませたこともあった。

 

 

スカウトにナンパ師開示されて連れ出しを邪魔されたりしてた時期があったときも、彼女と歩いてる時にされたら嫌だなと思ってクソみたいな自分とクソみたいなそのスカウトを呪ったし

 

 

コンビ連れ出しで即ってノーグダだったのに警察沙汰になりかけたあの朝あの帰り道も、自転車で出勤する彼女を見て自己嫌悪に陥った。

 

 

 

 

 

 

僕はナンパを辞めることが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

辞めるという選択自体、選択肢にはなかった。

 

 

それでもいいって思ってたけど、

 

 

 

いつからだろうか。

 

 

 

いつからか、彼女の存在が少し煩わしく感じてしまうようになってしまっていた。

 

 

 

 

 

 

僕はもう彼女と付き合い始めた頃の自分とは少し変わってしまったような気がしていた。

 

 

少しだけどメイクをするようになって

 

服の趣味や、女の子の趣味も変わったし

 

彼女くらいのスペックの子ならストネト併せて月に2人くらいは抱けると思い始めていて、

 

 

もっと良いのを抱けるようにならなくちゃという向上心に似た焦りのような感情もあって、

 

 

お互い連絡を取る頻度や会う頻度が著しく減ってしまったのも別れを考える原因になった。

 

 

 

その癖、僕は彼女にもう好かれてないのかもしれないと思うのが嫌で彼女の浮気を疑った。

 

 

 

 

ある日、スマホ見せてよ、と僕は言った。

 

 

彼女は快諾して見せてくれた。

 

 

LINE、電話の履歴も見たけど何もなかった。

 

 

 

むしろ男とのやりとりで彼氏さんとどんな?と聞かれて僕を褒め称える内容の返信があった。

 

 

 

 

僕は疑った自分が女々しくて嫌になった。

 

 

 

 

浮気の一つでもされてたかった。

 

 

 

その方が吹っ切れただろうから。

 

 

 

 

どう考えても僕にとって理想の彼女だった。

 

 

 

 

 

 

その後もお互いしばらく連絡は取らず、

あまり会うこともなくなってたけれど。

 

 

 

 

 

僕が最後のデート決めた日、夏のボーナスが出たから奢るよと言って居酒屋に誘った。

 

 

彼女の口から

飲食業だからコロナウイルスの影響で月の収入自体が大体6割くらいになってしまったこと、

加えてボーナスも出なかったことを聞いた。

 

 

耳に挟んではいたけれど、

 

彼女の事が好きな彼氏ならばきっと支えてあげようなんて考えに至っただろうと思った。

 

 

あとは

自前で着せようと思ってたのにコロナでお祭りがなくなり僕の浴衣姿が見れず残念だとか、

 

一人暮らししようと思ってるなんて言うと

早くしようよなんてわくわくした様子だった。

 

 

奢りって言ったのにお金を出そうとしてきたし

 

 

帰り道にスタバのドリンクを買ってくれた。

 

僕たちは2人で途中まで歩いて帰った。

 

 

僕がおどけてみせると、

彼女が少し呆れたような口調で言葉を返す。

 

 

 

どのキセクとデートしても嫌でも彼女とがいちばん楽しくて心地いいんだと実感させた。

 

 

きっと僕は彼女の気持ちを確かめたかった。

 

 

最初から、きっとこの子の気持ちが僕から離れたらその時が別れる時だろうなんて思ってた。

 

 

だから楽に別れたくて嫌いになりたかった。

 

 

「ああ、僕はこの子の事嫌いになれないんだ」

 

 

 

彼女の顔を見る度何度も。

 

 

 

後ろめたい気持ちを何処かに忘れて

 

 

荒んでいた心が癒されて

 

 

悩んでいた自分がばからしくなった。

 

 

 

さよならの時はいつも彼女は振り向かない。

 

 

いつも僕は、その背中を名残惜しそうに見る僕という光景を俯瞰して僕なんかいなくても彼女は強かに生きていけるだろうと思っていた。

 

 

 

 

その日からお互いに連絡しなかった訳だけど、

 

 

10日後くらいに彼女に話したいことがあるから都合の合う日にきて欲しいとLINEで伝えた。

 

彼女の返事のLINEには珍しく絵文字もスタンプも使ってなかった。何かを悟った様子だった。

 

 

その次の日。

一年前付き合い始めたくらいの日。

 

 

いつもの様に彼女は僕の家の下にきた。

 

 

 

迎えに行くと振り向く彼女を見てこの光景も最後なんだなと思うと少し寂しくなった。

 

 

 

彼女は少し怪訝な顔で僕の肩にゴミがついてるよ、と言って払ってくれた。

 

 

 

「話ってなあに?」

 

明るい口調で彼女は聞いた。

 

 

 

「散歩しながら話そう。」

 

暗い口調にならないように僕は答えた。

 

 

 

いつも一緒に散歩する川沿いのファミマで僕はフラッペを買って彼女はカフェオレを買った。

 

 

飲みながら少し歩くと

 

 

「ところで話ってなあに?」

また同じような口調で聞かれた。

 

 

 

 

 

 

「なんか話し辛くてさ、」

僕の口調は少し曇った。

 

 

 

 

 

 

 

 

別れの言葉を告げようにも声が震えてしまいそうで口にすることができなかった。

 

 

 

 

 

きっと10分近くは沈黙が続き、

2人で夕暮れの川沿いを長らく無言で歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おれはさ、もう別れてもいいと思ってる。」

 

 

ようやく捻り出したのは、ため息混じりの少し震えた踏ん切りのつかない情けない言葉。

 

 

 

 

 

 

「べつにいいよ」

 

 

 

 

 

 

別段、驚きはしなかった。

 

 

 

 

 

「うん、そうしよっか。」

 

 

 

 

 

ただ、本当にもう終わってしまうんだなという事を実感して、頬を伝いそうだったから少し上を向いてそのまま無言で歩いた。

 

 

 

 

 

「そっか、じゃあこれで最後だねー。」

彼女は言った。

 

 

 

「私も別れようかなって思ってたんだよね〜。でもなんか色々してくれたから申し訳なくて」

 

 

 

何となくわかっていた。

相変わらずだなあ、だなんて僕は思った。

 

 

 

 

「不満だったことがあれば言った方がいいよ。私も前別れた時言えなくて後悔してるから。」

 

 

 

 

「逆にあるなら先に言ってよ」

 

 

 

 

 

彼女の口からはつらつらと不満が出てきた。

 

たまに言う事が以前と違うからどうすればいいかわからないとか、

細かく書くのはなんだかやるせないから書かないけど大体そんな感じ。

 

 

予想以上に相変わらず強かだった。

 

 

少し涙も引いてしまった。

 

 

 

 

僕は仕方ないから笑って聞き流した。

 

 

 

 

 

 

「言わないの?言わないと後悔するかもだよ」

彼女は不満だった事について聞いてきた。

 

 

 

 

 

 

「おれはさ、お前みたいな顔も可愛くて性格も良い子が彼女で本当によかったって思ってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

別れ際はもっと淡白に済ますつもりだった。

 

 

 

ただこの日も彼女は可愛かったし、嫌いになれない、寧ろ好きだったんだと心から実感した。

 

 

 

だから感謝の言葉しか出てこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も、○○の事は本当にみんなに自慢してたしいつも私の話を聞いてくれてありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女の家の近くまでの川沿いを歩いた。

 

 

僕は時たま空を見上げながら。

 

 

 

 

 

 

 

橋の手前で

 

 

 

 

 

 

 

 

「大した所連れてってあげれなくてごめんね」

 

また声が少しだけ震えた。

 

 

 

 

 

 

「ぜんぜん。一緒に大阪行った時はほんと楽しかったし、そのお陰で辛い仕事も頑張れたよ」

 

 

 

 

 

 

わかってる。もう昔のことだね。

 

 

 

 

 

「出会えてよかった。本当にありがとう。」

 

僕は情けない。

別れ際も綺麗に別れられない。

 

 

 

 

 

 

「そんなのずるいよ。」

 

一生懸命次の言葉を紡ぐ彼女を見ていられなかった。彼女は既に別れを決めているんだ。

 

 

 

 

 

 

「じゃあね。」

 

僕は背中を向けて立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐ視界が滲み溜め込んでいたものが溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言えなかったことがあるとすれば、

 

ずっと変わらないでいて欲しいなんて自分勝手な要望くらいだけど、そんな臭い台詞を吐いたら女子会のネタにされてしまいそうで怖い。

 

 

 

 

彼女は結局何も知らなかった。

 

 

別れを告げた日、川沿いを歩きながら

「前に友達と一緒に電車乗ってたら女の子といるのみかけたんだけどあれ妹ちゃんだよね?

友達が見つけて女の子といる、って言ってたから。でも、妹ちゃんと仲良いの知ってるし。」

 

あの日は妹と買い物行ってた、なんて嘘をついたけど疑ってすらなかったんだなと思った。

 

 

ある日なんで疑わないの?と聞いた事がある。

 

浮気されたことがないからだと思うなんて言ってたけど意図的に避けている様にも思えた。

 

そんなことで悲しむ顔を見たくなかったからいちばん恐れていたことがなく良かったと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は先週ブメを放ってた案件とアポで全くグダなく直ホ即だったなあ。

 

値5くらいのギャルで性格も雰囲気も元カノとは真反対のタイプだったけどセックスはエロくてヤるだけならこっちのが楽しいと思う。

 

でも搬送途中でなんだかお金の無駄みたいに感じてシラけちゃった自分がいた。

 

 

最中も少し勃ちが悪かったし。

 

 

 

付き合ってた頃を思い出すとこんなになっちゃうから正直ブログ書くのも気が進まなかった。

 

 

 

 

 

でも未だに

 

 

美味しいスイーツを食べた時とか、

 

綺麗な景色を見たときとか、

 

お洒落なカフェを見つけたとき、

 

何か面白い雑貨や家具があったとき、

 

キセクと話してる時だって、

 

 

 

思い出してしまうんだけど。

 

 

 

 

別れたあの日こそ僕は振り返らなかったけど

 

 

 

 

 

さよならの時にいつも振り向かなかった彼女の背中をいつまでも見送ってる様で嫌だな。